深海から見える灯【完全版】
学校まではちょっと長い坂道が続いている。

あたしは田舎育ちだから歩くのが遅い。
何で都会の人は歩くのが早いのだろう・・・。

サトはあたしより随分先を歩いている。

(屋上で遊ぶって何して遊ぶのかな)

考えていると、サトがゆっくり戻ってきた。

「歩くの遅いね」

笑ってあたしに手を差し出した。

「田舎者なんで。すいませんね」

あたしがむくれていると、あたしの手を掴んだ。

(え?ちょっと、手繋いで歩いてるんですけど!!)

手汗が出ないように祈りながら2人で歩いた。


「ねぇ」

あたしの声に「ん?」と返事をする。

「屋上で何して遊ぶの?」

「うーん。特にないね。寝ようか?眠いから。気持ちいいよ」

「たまに屋上行くの?」

「1人でね。カギかかってるけど抜け道あるから」


変な人・・・。

すごく変わってる。

でも、何か楽しいっていうか、安心するんだよね。

ヒロみたいな感じとは違うんだけど・・・。


上靴に履き替えて階段を上がる。

授業中みたいで先生の声とちょっとした生徒の声が聞こえるだけで静か。


屋上へ行く階段を上がると、案の定「立ち入り禁止」の札がかかっていて、南京錠がガッチリかかっている。


「こっち」

サトは入り口のそばにある小さなドアを指差した。

「ちょっと離れてて」

そう言って、ドアを思い切り蹴っ飛ばした。

傾いでたドアが勢いよく開いた。
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