Black★Joker【完結】
「美空には言えなかったんだよ。龍馬にとって美空は一番大切な人なんだから」
『大切な人』という言葉にギュッと胸が締め付けられる。
大切だと思うなら、全部話して欲しかった。
あたしに手助けは出来なくても、一人で抱え込んでほしくない。
すると、優はあたしの頭にポンッと手を乗せた。
「美空に余計な心配かけたくなかったんだよ。それにもし龍馬が彼女を危険にさらそうとするような男なら、美空を譲ったりしないよ」
その手はあたしが昔から知っている優の手ではなくなっていて。
ゴツゴツしていて大きい、男の手をしていた。
あれ?っていうか、今の優の言葉……。
「……ねぇ、あたしを譲ったりってどういうこと?」
「ううん、何でもないよ」
優は少しだけ照れ臭そうな表情を浮かべている。
「隠さないで教えてよ」
「もういいんだ。僕は龍馬と美空をちゃんと祝福できるから。自分の気持ちに踏ん切りがついた」
あたしと龍馬を祝福……?踏ん切りがついた?
まるで優があたしを好きでようやく諦めがついたみたいな言い方して。
あたしは首を傾げながら優を見つめた。