《完》極上☆SWEETS!! 〜愛しのショコラ・プリンス〜
「いいのよ。

あたしはもう、諦めたんだから」


もう、デザイナーの夢は忘れる。


パリを発つときに、そう決めた。


「えっ――きゃっ!!」


不意打ちの衝撃に、あたしは
驚いて小さく叫び声をあげた。


爽介がいきなりあたしの
腕を掴んで――反射的に
あたしは、手に持ってた
紙コップを落としてしまう。


カツン、パシャッっていう
音がして、まだ少し残ってた
コーヒーが足元に水溜まりを
作った。


「なにす―――」


セリフは最後まで言えなかった。


爽介が、怖いくらい真剣な
瞳で、突き刺すように
真っすぐにあたしを見てたから。


「諦めるとか言うな。

ソレ、オレがイチバン
嫌いな言葉」


低い、押し殺した声。


怒ってるの、爽介――?



「で、でも仕方ないじゃない。

そうするしかないときだって
あるし、それであたしが
納得してるんだから別に――」


「納得なんかしてねーだろ。

お前、デザインすんのが
好きなんじゃねーのかよ?

好きなことって、そんな
簡単に諦め切れるもんじゃ
ねーだろ」
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