《完》極上☆SWEETS!! 〜愛しのショコラ・プリンス〜
あたしにも爽介の顔は
見えないけど――酔って
気分が悪くなったって
誤解したみたい。


――違うよ、爽介。

そんなんじゃないの。


言葉にならない心の声が、
伝わることはなく。


「ったく、やっぱムリして
たんじゃねーか。

オイ、帰るぞ――!」


セリフと同時に、もう爽介は
立ち上がろうとしてて。


あたしの手の中の爽介も、
遠ざかろうとした――。


「イヤ! 帰らない」


とっさに両手に強く力を
込めて、離れかけたその
手をもう一度しっかりと掴む。


「――は!?

何言ってんだ、具合悪い
くせに酒なんて飲んでる
場合じゃねーだろがっ。

とっとと帰るぞ!」


「帰んない!
帰りたくないの――!!」


必死なまでに頑ななあたしの
声に、ようやく爽介も、
ただ具合が悪いわけじゃ
ないって気づいたようだった。


「亜莉紗……?」


あたしにつかまれた左手は
そのまま、椅子から立ち
上がって、テーブルを回り
込むようにしてあたしの
傍まで来てくれる。
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