《完》極上☆SWEETS!! 〜愛しのショコラ･プリンス〜

　　　　　☆☆☆☆☆



その店に近づくと、バター
とか生クリームとか、
そーゆー色んな甘いものが
混ざった、いい香りが
漂ってきた。


｢ふぅん。
けっこういい匂いじゃない｣


でも残念ながら、今の
あたしにはその香りを
楽しむ余裕が、あんまりない。


だって、思いっきり通勤
ラッシュの時間帯に、
地下鉄に乗って一人で
新宿に来てよ？


駅から店までの道も、
すっごいヒトゴミ。


もとから電車なんて滅多に
乗らないあたしに、あの
ラッシュはマジヤバいって……


これから毎日これを繰り
返さなきゃいけないのかと
思うと、それだけでモチベ
下がりまくる。


そして、あたしから余裕を
奪う、イチバンの理由は。


……今から、そのお店――
パティスリー･ルナに、
初出勤ってこと。


新宿なんて場所にある
くせに、ルナはテナント店
じゃなくて、ちゃんとした
一軒のお店だった。


１階建てで、横にやたら長い。


狭めながらも駐車場も併設
されてて、敷地面積から
するとかなりの大きさって
言っていいと思う。