君が嫌いな君が好き
「…ほんとか?」
『ほんと。
なに?疑うの?』
「いや、そういう訳じゃないけど…」
悠斗は気まずそうに目を逸らしている。
『…で、何か用なの?』
「へ?…あ、いや…別に。
ただ、なっちゃん大丈夫かなぁ〜…って」
『…そう。
私、大丈夫だから悠斗寝たら?』
「あ、あぁ…」
『私寝る』
捺は、くるっと寝返り悠斗に背を向けた。
「…そっか。じゃあ俺、部屋戻るから…」
『…』
「何かあったら、いつでも呼べよ?
お兄ちゃん、すぐに駆け付けるから」
『…』
「…おやすみ」
捺から返事は返って来なかったが、そっとしておいたほうがいいだろう…と悠斗は自分の部屋へと戻っていった。
ジリリリリリリリ!!!
翌日。
悠斗は目覚まし時計の煩い音に起こされた。
「…もうこんな時間かよ………っハ!!捺は…っ」
また捺の熱が上がりぶっ倒れていないだろうかっ…悠斗は顔を真っ青にして部屋を飛び出た。
『……なに』
するとすぐそこに、制服を着て鞄を持った捺がいた。
「え、あ…捺、熱は…?」
『…下がった。遅れるから行くね』
「おう…気をつけてな」
頷くと捺は学校へ行った。
その様子を眺めて、悠斗は「ふぅ…」と安堵のため息をついた。
ピリリリリリ…ピリリリリリ…
「んぁ?……あぁ…
もしもし、慎?…あぁわかった。10時からな。
俺、夕方バイトだから5時に抜けるぞ……あぁ、じゃ後でな」
(あと1時間だけ寝るか)