君が嫌いな君が好き
『足音聞こえたから、覗いただけ』
「え?愛のパワー?」
『殺意のパワー』
捺は、冷たく言い放つと自室に戻りドアを勢い良く閉めた。
「……」
寂しい。
昔みたいに捺を、ぎゅっ…と抱きしめることは二度と出来ないのか?
「…」
そんなことを思っていると、ドスドスと荒々しい足音が近づいてきた。
「悠斗」
「…おじさん、ただいま」
俺の大嫌いな奴だ。
「金は?」
「言ってるじゃないですか。
俺達の分の生活費は俺が出してます。
あんたに金をあげる理由がない」
俺が、目を細めて威嚇すれば叔父は、憎たらしい顔で笑った。
「ガキの頃、育てやったのは誰かなぁ?」
俺が小4で捺が小1の頃。
両親は、事故で死んだ。
で、親戚の叔父と叔母に預けられた。
両親が生きてた頃に、何度も会った人達だから安心してた。
でも、叔父と叔母は全くの別人になり変わっていた。
(辛い思い出だった)