君が嫌いな君が好き
両親が生きてた頃の叔父と叔母は、優しかった。
訪れる度に、「大きくなってー」とか「ますますお似合いの二人ねー」とか、優しく微笑みかけてくれた。
でも、預けられてからは散々だった。
虐待の嵐。
俺と捺は、小さい体に沢山の傷を負った。
俺は小5だったから、まだいい。
捺はどうだ?
小1だぞ? まだ学校にも慣れてないのに。
捺が背負うには、重すぎる傷じゃないか。
「悠斗、金出せ」
叔父がこう言い出したのは、俺が中学に入ってからだった。
叔父や叔母に頼るのが、嫌になって。
親友の兄貴が、コンビニの店長だったからそこで、働かせてもらった。
勿論、働く本当の理由は言ってない。
「叔父と叔母に恩を返したい」とか、ヘドの出そうな嘘をついた。
捺と居れる時間は短くなったけど、自分は自分の力で生きていると思えて嬉しかった。
何より、叔父や叔母の金じゃなくて俺の稼いだ金で捺を養えることが、嬉しくてたまらなかった。
でも、頑張って稼いだ金は叔父や叔母に4割は取られてた。
最初のうちは、我慢してた。
でも全額取られた時…俺は、おもいっきり反抗した。
大人の力に敵う筈はなくて、俺はボロカスにやられた。
他の大人に話すって方法もあった。
…でも、結局人に頼るんだって思うと悔しくて出来なかった。
俺の気持ちを知ってか知らずか、捺も誰にも話すことはなかった。
何より、叔父と叔母は近所でも有名な「心優しい夫婦」と言われているから、信じてくれる人も少ないだろう。
(諦めは早くない筈なのに)