旅の終わりの物語
「手加減なんかしてたら、ダニエラはまた死ぬわ!人間相手に何を躊躇しているの」

躊躇もするはずだとアストレイは心の中で叫んだ。一度は同じ目的を持って共に戦った相手を殺すことなど出来なかった。

人間など愚かな生き物だと思っていたが、エルナディアは、魔物と仲良く戯れるエルナディアは違うのだと知っている。

「止めろ!お前に何があった」

「…」

エルナディアはアストレイの言葉を無視し続けた。魔法と剣を合わせ、次第にアストレイを追い詰めて行く。そして、エルナディアの剣がアストレイの喉に突き付けられた。

「どうしたの?そんなんじゃダニエラは守れないよ」

再び、エルナディアに問い掛けようとするが、それを遮るように、腹に拳が叩き込まれた。

「どうしたの?魔王なのにこんなに弱くなってどうするの?ダニエラ死んじゃうよ」

うずくまるアストレイの耳元で、小さく何かを囁いた。それにアストレイは目を開いて、痛む腹を押さえて立ち上がった。
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