旅の終わりの物語
「では何故、生きている」

「時の石を砕いて、魔物たちにかけていたのです。砕いた小さな石は効果が遅くなります。アストレイ様が訪れた時には確かに死んでいたのです」

「勇者よ。一体何を」

「この子は人の世に絶望したのです」

リンゼイは倒れたままのエルナディアの額に手を当てた。それは母親の様に優しい手つきだ。

「安息の眠りを…」

魔法で眠ったエルの身体に少年は身に纏っていたマントをとりそっとかけた。

「母上。エルを」

「そうね。場所を移していただいてもよろしい?ここは寒すぎます」

「あぁ」

リュークはエルナディアを抱き上げると、リンゼイは移動魔法を唱えた。


リンゼイたち親子の家はかつて魔族の城を囲む深い森の奥にある。リンゼイの夫、デューク·ヘーゼルナイトバロンはこの森を守っていた。
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