Angil voice ~君の声がこの街に響くように
眠れぬ夜
 4日目の夜、俺は誰かの泣く声で目が覚めた。
真夜中で、時計の針は2時過ぎていた。

誰かの泣く声といっても、ここには凛と俺しかいない。
だが、凛が泣いていることは考えられなかった。

泣く理由もわからないし、いつも明るい凛からは
想像できなかったからだ。

だが、声はどう聞き耳を立てても凛の部屋から聞こえる。

俺は凛の部屋を軽くノックした。

返答はない。

「凛?」

「・・・・。」

俺は心配になって、ゆっくりとドアを開けた。

すると、そこにはフローリングに座り込み、
膝を抱えて子供のように泣く凛がいた。

俺はすぐ駆け寄り、座り込み、
「どうした?」
と聞いた。

「すいません。起しちゃいましたよね。」
凛はすぐには泣いた理由を言わなかった。

俺はポロポロと流れる凛の涙を手で
ひとつひとつすくいあげた。

「すごく、怖い夢を見たんです。
世界中に誰もいなくなって私だけが取り残される夢。
真っ暗で何もない。何の音もならない。
叫んでも叫んでも、誰にも声が届かなくて、
自分の声すら聞こえない。」

凛の震えは止まらなかった。

俺は凛を抱きしめた。
震えなんてわからなくなるくらい、強く抱きしめた。

「大丈夫、大丈夫だよ。俺がいるから。
一人じゃないよ。」

俺がそう言うと、落ち着いたようで、いつのまにか
凛の震えが止まっていた。


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