Angil voice ~君の声がこの街に響くように
あれからどれくらいの時間が経っただろう・・・。
凛が安心したようでウトウトしてきた。俺は凛をベットに寝かせようと
抱きしめていた腕を離そうとした時だった。
小刻みに震える手が俺のシャツをつかんだ。
「凛?」
彼女は唇に力を入れ、黙っている。
「眠れないの?」
彼女がコクンと頷いた。
俺はその時、正気じゃなかったのか、
彼女がほっとけなかったのかわからないが、
抱きしめること以外で彼女を恐怖から救う方法が見つからなかった。
そして、俺は彼女を抱きしめ、眠った。
目が覚めると、俺はいつものように凛に起こされた。
明るく元気な凛に戻っていて安心した。
だが、凛が眠れなくなったのはその日だけではなかった。
3日に1日のペースで夢にうなされ俺が抱きしめて眠る日々が続いた。
今思えば、一人で抱え込む彼女の苦しみは
この時から始まっていたのかもしれない。
そして、あの悪夢は彼女をこれから迎え撃つ運命が決して
明るくないこと、そして彼女が孤独であることを示唆していたのだ。