Angil voice ~君の声がこの街に響くように
「くしゅん。」

彼女がいきなりくしゃみをした。
それはそうだ。あれだけ冷たい海水に入ったのだから。

「風邪ひくよ。」
俺は羽織っていたパーカーを彼女に着せた。

「でも、羽流さんが寒くなっちゃう。」

「俺は大丈夫。」

「すいません。ありがとうございます。」

「もう、帰る?」

「えっ?」

「寒いだろう。風邪ひくよ。」

「私は大丈夫です。もう少し、もう少し海を見ててもいいですか?」

「凛が寒くなければ、いいよ。」

「このパーカーすごく温かいです。」

「それは良かった。」

俺たちはまた、浜辺を歩き始めた。

「ありがとうございます。」

「何が?」

「あの曲を歌わせてくれたこと。
まだ、ちゃんとお礼言ってなかったから。
私にあんな素敵な歌、歌わせてくれて。」

「いや、お礼を言うのは俺の方だよ。
あの曲を作らせてくれたのは凛だから。」

層そう、言うと彼女が嬉しそうにほほ笑んだ。

夕日が彼女の顔にあたって、いつも以上に彼女を輝かせた。



そして、彼女を俺は抱きしめたい、と思ってしまった。


溢れる彼女への思いを抑えきれなくなった・・・。








俺は彼女の震える肩を自分の方に引きよせ、
唇にそっとキスをした。
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