Angil voice ~君の声がこの街に響くように
永遠を誓った夜
 その日の朝、公園の桜が満開になったというニュースを見た。
凛が見に行きたそうだったから、俺は公園に行こうと誘った。


彼女がこの部屋に来てから、丁度今日で2週間が経とうとしていた。



公園に行くと、出店が並んでいて家族連れで賑わっていた。
この公園は桜が有名で、見渡す限りの桜並木が道を作っていた。

俺たちはその桜並木を手を繋いで歩いた。


「羽琉さん。聞いていいですか?」

「何?」

「ずっと前から聞きたかったんですけど、
羽琉さんて、どうして作曲家になろうと思ったんですか?」

「どうしてねぇ・・・。改めて考えると・・・。」
俺は口を濁らせた。

「初めて作ったものだったからかなぁ・・・。」

「えっ?」

「俺昔から、結構何事もそつなくこなすんだけど、どれも中途半端で。
これといってやりたい事や夢中になれることはなかったんだ。

でも、高校から音楽初めて、ピアノやギターを弾くようになって、
バンドを組み始めるようになってから、曲を書き始めたんだ。

はじめは、もちろん上手くいかなかったけど、出来上がった時、
とにかく嬉しくて。俺の作った曲をバンドのメンバーも喜んでくれて・・・。
それから曲を作ることの楽しさに気付いて音大に進んだんだ。」

「羽琉さん、音楽の話している時、本当楽しそうに話しますね。」
そう言って凛が笑った。

「本当?なんか、そう言われると照れるんだけど・・・。」
また、二人で笑った。

「凛は?いつから歌い始めたの?」

「私は初めて歌ったのは3歳の時だったかな。

それから、お母さんが毎日ピアノを弾いて、
私に音楽のことを教えてくれたんです。
音符の読み方から、発声の仕方まで・・・。
絶対、凛はいい歌手になる。って言いながら楽しそうに。

お母さんが体を壊す7歳の時まで、とにかく本当に毎日、
音楽漬けの日々でした。
だから母の死以来、歌うことはほとんどなかったんです。
正直、母を思いだすことが辛い時期もあって・・・。

だから、私、またあんなに楽しく歌が歌えて嬉しくて・・・。」


< 49 / 105 >

この作品をシェア

pagetop