Ａｎｇｉｌ　ｖｏｉｃｅ　～君の声がこの街に響くように
　そんな事を思っていた時、
急に彼女が水面に浮かび始めた。
そしてもう、暗くなった空の月を眺めている。


「どうしたの？」
俺は不思議そうに聞いた。

「ねえ、羽流さん、地球はこんなにも広いのに、
　何で私の命はこんなに短いのかな。

　私はこの世界のまだ、１／１０だって見ていないのに。」
そう言って下唇を少しかんだ。

「凛。」



俺が心配そうに見つめると、急に表情を明るくし、
「私、生まれ変わるなら人間以外に生まれ変わりたいな。」
と言った。

「どうして？」
俺は凛に聞き返した。

「感情が誰にもわからないように・・・。」

「えっ？」

俺は彼女の放った言葉の意味を考えていると、
彼女が急に起き上がり浮かぶのを止めた。

濡れた髪から滴が落ちて肩にかかった。
俺がそれに見とれていると、彼女が思いがけないことを言った。

「ねぇ、羽琉さん。」

「何？」

「キスして。」
俺は耳を疑った。
彼女の口からそんな言葉が出てくるなんて思ってもいなかったから。


凛は俺をじっと見つめている。
冗談ではないらしい。

俺は息を飲んだ。

彼女に触れてしまったら、この感情を止められるか、不安だった。

俺は、凛の濡れた髪を引きよせ、何度も何度もキスを交わした。


俺は愛しくて堪らない彼女への思いを、抑えるかのように彼女を抱きしめた。



月明かりが俺たちを照らしていた。
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