Angil voice ~君の声がこの街に響くように
 ゴホッゴホッ。

ハーーーハーーーー。

上手く息ができなくてくるしそうだ。

俺は焦って、ナースコールをつかんだ。

すると、凛の手がそれを止めた。


「帰って。」

「それどころじゃないだろう。早く呼ばないと!!」

「帰って!!こんな姿見られたくない。」

声を出すのもやっとなのに、俺を帰すことで凛は必死だった。

「貴方が帰ったらすぐにコールするから、帰っ・・て・。」

凛はずっと俺の方を見ている。語尾まで息が続かないほど疲労していた。



このままでは凛が苦しいままだ。
俺は最善の方法だと思い、そのまま部屋をでた。



何もできない無力な自分に涙がでて、凛の病室のドアの前で
声を殺しながら泣いた。










・・・・その後、薬の投与により、
凛の発作が治まったことを聞き、俺は部屋に帰った。


 

 坂井が言っていた凛の本当の気持ち。

あれが凛の本音なのだ。

俺との生活では殺していた・・・。あの感情を。


そして、あの眠れない夜は彼女の死に対する恐怖を示していた。

あの時、それに気づけていれば、もっと早く
彼女を闇の中から救いだせたかもしれない。


そして恐怖だけじゃなかった。
まだ、若い凛は他の20歳の子達のように大きな夢がある。
未来に希望がある。


それをいっぺんにもぎ取られた凛は、感情の行き場を
なくす他なかったのだ。





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