Angil voice ~君の声がこの街に響くように
 俺は準備を始めた。

彼女を死の恐怖から救うための。

躊躇している余裕はなかった。

立ち止っている余裕もない。

急がなくては。




式場の準備は着々と坂井が進めてくれた。

俺はエンゲージリングを買い、市役所に行って婚姻届を取りにいった。

まだ凛には伝えていない。


俺はこれからプロポーズするというのに、いつもと同じ格好。
雰囲気を出すために花でも買ってみた。

俺は変な気負いはなかった。
凛を救うため、そうなのだが、正直その時の俺は
プロポーズを前に緊張するどこにでもいる男だった。



凛の病室の前、俺の緊張はピークに達していた。





コンッコン。

俺は病室をノックした。


あの日以来、病室に訪れるのは今日が初めてだった。


拒絶されたまま、プロポーズしようとしている自分の順序の悪さに
俺はその場を去りたくなった。






 そんな事を思いながら、俺はドアを開けた。
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