Angil voice ~君の声がこの街に響くように
 式は6月に入ってすぐの日曜日に行うことに決めた。
ジューンブライドにかけて6月にしたそうだ。

だが、それは凛に言うための口実で本当は凛の体力がすでに限界だったのだ。


結婚を決めたから、坂井も凛に会えるようになった。
結婚式の打ち合わせも兼ねてだが、何より凛の精神状態も落ち着いていて、
凛の方から坂井に会いたいと言ってきた。


久しぶりに再会した坂井と凛は二人で泣きながら抱きしめあっていた。

姉妹なのに上手く会えなかった二人の絆がつながった気がした。




 ・・・ふと、坂井が凛の父親の話をし始めた。

 ずいぶん前から、凛に会いたがっていたらしい。

今回、凛の病気の状態と結婚式の事を聞いて、式の前に会いたいそうなのだ。

離婚してから、坂井のことも凛の事も気にかけていたという。

凛にいたってはずっと仕送りし続けていたらしい。


 凛の父親はとにかく優しく子供思いの方で、離婚するまで
凛は父親にべったりだったそうだ。


凛は何のためらいもなく、懐かしいような顔をして、一言、
「会いたい。」
と答えた。


しばらくして、凛の父親が病室に訪ねてきた。



身なりは普通のサラリーマン、
年は40後半といった人だった。

だが、とにかく表情が柔らかく、本当に優しそうな人だった。


病室に入るなり、すぐさま凛へ駆け寄った。




1年前、凛の病気を告知された時から会っていないらしい。
戸籍は違うが、凛の父親はすぐに凛を自分の所へ引き取ろうと
思ったそうだ。

だが、凛の母親の事を思い出し、少しずつ精神状態がおかしくなった
父親に坂井が自分が預かると申し出たそうだ。



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