Stylus
ユキナ『安田くんだよね!』

やすし『・・・』

ユキナ『安田くんだよね・・・』


ここで目が覚めた。
安田くんだよね・・・
つまり彼女は俺を知っていた。何故?
彼女は大学のマドンナ、俺はどこにでもいる冴えない男。
サークルにも所属していないし、最近は授業がないので大学にすら行かない日々。

謎は深まるばかりだ。


そんなことを考えながら、再び夢の世界に突入していった・・・

次の日、とりあえず大学に向かった。彼女の姿は見つからなかった。というより夏休みに学生はいる訳が無かった。

『無駄足か』と思いながら、せっかく大学に来たのだから、本でも借りようと図書館に向かった。


夏休みの図書館は空いていて、たまに来るには悪くなかった。やすしは洋書のデザインの本を眺めるが好きだった。
ぼけーっとインテリアや建築などのデザインを眺めているとシステムや設計の素晴らしさに心を打たれる。

『あれ!?』

『設計・・・』


何かに頭を殴られるような衝撃を受けた。

『設計・・・』


そう、『自分自身の人生設計』、つまり『生きる目的』・・・

やすし『デーモン・・・』


俺は奇妙な感覚に襲われたのと同時に、自分自身の人生設計について考えなければならない必要性にかられた。

やすし『人生設計・・・』
そうつぶやいてみた。

俺は今まで、人生設計なんて考えたこともなかった。特別な彼女がいたこともなかったし、女の子とうまくやるのが苦手だった。たまには彼女欲しいなとは思うが、俺には好きという感情が理解できなかった。童貞ではないのがせめてもの掬いだったが。

しかし、しかしだ。

今彼女は俺の名前を覚えてくれている、そんなポジションにいるのだ。
俺は考えた。
彼女と付き合いたい。と。
それにはどうしたらいいか、全くわからなかった。
立場が違いすぎる・・・
それはハッキリと認識していた。
だが・・・
< 8 / 17 >

この作品をシェア

pagetop