空模様、降り流れては虹を待つ。
「本当に申し訳ないと思っているんだ。でも俺は──」
雨で掻き消えてしまえ、と願うのに、否応なしに千鶴の耳に届いて来る修の声。
無言の千鶴に修はくどくどと言葉を並べ、もうかれこれ10分は経っているのではないだろうか。
何度も同じ台詞が出て来て、そのたびに千鶴は心臓を握り潰されるような錯覚に陥る。
自分の気持ちは修を向いたままだったけれど、修の気持ちはいつの間にか違うところを向いてたのだということが、千鶴の胸を痛めつけていた。
心変わりがあるのは仕方ない。そうわかっていても涙は溢れ、止まらない。
修が言い訳を並べれば並べるほど、自分たちの過ごした日々がくすんで行くような気がした。
もうそこに愛はないのだと、何度も言い聞かせられているような。
あの日々はまやかしだったのじゃないかと思うくらいに。
綺麗な別れを望んでいるわけではないけれど。
愛した思い出はそのままでと思うのは、我が儘なのだろうか。