空模様、降り流れては虹を待つ。
砂浜をザリザリといくら爪先で擦っても、雨がたまって平らにしてしまう。
その激しい雨はまるで、新しい長靴を躍起になって汚そうとしているような千鶴を笑っているかのようだった。
漸く修の口から、「行こうか」という言葉が出て、千鶴は足の動きを止めた。
その言葉が修の口から出るのを待っていたかのような自分に、嫌気がさす。
未練がましい気がして。
こんな時『こっちから願い下げよ』と言える女なら良かったのに。
修は当然ながらそんなことは全く気にせずに、千鶴に背を向けて歩き出した。
少し間隔をあけて、千鶴はその後を追う。
歩幅の違う足跡が時折重なる。
──もう隣を歩くのは、私じゃない……