イジワル王子に恋して
「確かめてみる?」


ロビーで田中先輩に呼び止められ、
クラスメイトの女の先輩が圭の部屋に向かったって事を聞いた。


「でも…」

「…彩子ちゃん、もう目をそらしちゃダメだよ。」



田中先輩の部屋は圭くんの隣。

彩子は田中先輩に言われるがまま、部屋に入る。

圭くんの部屋の方の壁に耳をそっと当てる。


隣の部屋からもれる女性の甘い声…
ベッドのきしむ音と重なるように声が聞こえた。


「っつ…」


彩子はすぐに壁から耳を離した。


「圭く…」


彩子はギュッと目を閉じた。

「ほら…だから、無駄だよ…彩子ちゃん…僕が、いるよ?」


その背中を田中先輩が包み込む。

彩子の涙がその腕にポツリポツリと流れていった。
< 63 / 163 >

この作品をシェア

pagetop