恋にきく魔法
そう妖しく微笑むと、昨日のようにパチンと指を鳴らした。
ま、まさか自転車ごと浮くんじゃ…
そう思ってぎゅっと目をつぶっても、浮いている感じがしない。
うっすらと目を開けるけど、さっきと何も変わってなかった。
…でも、なにかが違う。
そうだ。さっきまであった刺すような視線。
街を歩いてる人達は、猛スピードで走る二人乗りの自転車に見向きもしない。
「ねぇ、どうして?どんな魔法かけたの?」
「へへっ。透明になってるからだよ、俺達」
そういうことかぁ…
って簡単に納得してしまう。
だって頼斗にとったらこれが普通だもんね…
あれ?でもさっき魔法は使いたくないって、言いませんでした…?
「うるせー、それはいいの」
「ぎゃ!?読心術!!」
「それはできないけど…表情でわかる」
結局読んでないか……?
あり?
この人、今思いっきりあたしの方振り返ってるけど…運転は!?
「頼斗!前見て前!!」
「ん?あ″ーーー!」
自転車はお花屋さんの店先に突っ込む直前で、もうすこし遅れてたら…考えたくもない。
ていうか、やっぱりコイツといると疲れる…
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