恋にきく魔法
「あの…あなた、誰ですか?」
あえて怪訝そうな顔をして尋ねる。
もちろん、あたしは抱かれたまま。
「ごめんごめん、知らないんだよな」
子犬のような人懐っこい笑顔を見せると、優しくあたしを下ろす男の人。
「俺さ、まぁ簡単に言えば魔法使いなんだ」
「ふーん……ってえぇ!?」
この人、やっぱりおかしい!
思わず大声を出してしまって、慌てて口を押さえる。
「そりゃ驚くよなぁ」
「驚くって…魔法使いなんているわけないじゃないですか!」
「じゃあこれで…いないと思う?」
そう言うと指をパチンと鳴らす。
なんだかマジシャンみたいで胡散臭い…

あれ?なんだかだんだん地面が遠くなっていく気が…
ってえぇぇぇぇ!?
あたしの足はブラブラと宙に浮かび、体がどんどん空へと上がっていく。
ま、まさかほんとに……
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