授 か り 人
「では、まず、そのままの服装ですと、身体への負担が大きいと思いますので、こちらに着替えてください」
こちらと言われても、それらしい服は見当たらない。
しかし、火栄と氷斗は、それぞれ両手を伸ばしお菓子を頂戴、というようなしぐさで雷志と風稀の方へ体を向けている。
「どうしました? 受け取らないのですか?」
火栄が不思議そうな顔で雷志を覗き込む。雷志は、何か馬鹿にされている気分になってきた。
「受け取れって、何を? お前、別に何も持ってないじゃないか」
ベッドの上であぐらを掻き、火栄を指差す雷志。
「だからよぉ、いいから受け取れって言ってんじゃねぇか」
氷斗の方も、困惑した表情の風稀を睨みつけている。
「あ、そうですよね、普通手を出されたら、何かを手渡しするように思いますよね、すみません」
火栄はそう言うと、手前に出していた手を戻し、両腕を軽く広げて雷志に向き直った。
「はい、じゃあどうぞ、受け取ってください」
そう言って胸を張る火栄。
まるで、自分自身を持ち上げてくれと言っているような格好になっているが、やはり訳が分かっていないようだ。