授 か り 人
落下する恐れは無さそうだが、水の中に入れられた二人は空気を求めてもがき、巨大なたっぷりの水の中では手を伸ばしてもその外に出て空気に触れることすら出来ない。
否応なく訪れる最強の恐怖に呑み込まれそうになった瞬間、二人の身体に変化が訪れた。
その皮膚は柔らかい光を発し、水の中だというのに肺で呼吸をしている。
浮遊しながら体制を立て直し、ここに水が無ければ浮いているかの様に姿勢を正すことまで出来ている。
「浸透してきたようですね」
火栄が言う。
そして氷斗が、そこから出て来るように促した。
風稀が恐る恐る手を伸ばすと、巨大な水から腕を出すことが出来た。そのまま泳ぐように外に出ると彼の体表に水がうっすら纏わりついて、輝いて見える。
それに続いて雷志も外に出ようとした時。風稀の体にまとわりついている水が、動き出した。