授 か り 人

 霧のような小さな粒となったいくつもの水滴は、風稀の体から一直線に並ぶように離れていき、彼を囲むようにぐるぐると周り竜巻となった。

 その後、一瞬でただの細かい水滴となって、じんわりと風稀の体に戻り染み込んでいった。

 唖然としながらその光景を見ていた雷志も動揺を隠しながらゆっくりと手を伸ばし、外へ出た。

 風稀と同じ様に体に纏わりついている水は細かい水滴となり、一斉に真上へ上がって行ったかと思うと龍のごとくうねりながら雷志のもとへ、一直線に戻って来た。
 彼の心臓を貫くかの様な勢いで胸めがけて突進した龍は、そのままの雷志に吸い込まれていった。

 だらしなく、口を半開きにしている二人に、火栄が一声かける。

「これで、一人で移動が出来るようになりましたね」

 大きな水溜まりに気を取られ、自分が今空の上に居ることを忘れていた二人は、今更ながらに恐怖心が蘇ったのか、騒ぎ出した。

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