授 か り 人

「えっ俺今、どうやって浮いてるんだ?」

 雷志と風稀は、縋るように双方の腕や服を掴んでいるが落ちてしまいそうな素振りは無い。

「おいおい、お前ら地面を歩くときはどうやって歩いてるんだ?」

 氷斗が面倒くさそうに耳を掻きながら言う。
 まるで、透明な床があるかのように、寝転がっている彼はそれ以上話さない。

「地面は…普通に歩くよ?」

 風稀が言い、自分で何か答えのヒントを見出したかのような明るい顔になった。

 彼は掴んでいた雷志の服から手を離し、空中を歩き始めた。

「な~んだ、普通にしてればいいんだね」

 そう言うと、雷志達の周りをくるくると囲むように歩き出す。

 怯えていてはいけない。
 歩くときは、何も考えず進むだけ。
 だから、空中でも何も考えずに進めば良いのだ。

 解ったところで別に歩かなくてもいいと意地を張った雷志はその場にあぐらを掻き、この後のことを聞き始めた。

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