授 か り 人
特に内容の無い会話をしながら半分ほど進んだ山道。
向こう側から一人の女性が歩いてきた。
容姿端麗とまではいかないが、細身の体はバランスのとれた美しいものだった。
この先の住人であろうと思っていた四人はさほど気にせず、会釈もなしに通りすぎようとした時、
「まさか、雷志さんじゃないですか? それに、氷斗さんも! その節はお世話になりました」
足早に近づき、雷志の手をぎゅっと握る。その後、両手で包むように氷斗の体を撫でた。
もちろん、彼女への面識はない。
光の扉を通って来た雷志と風稀は特に、関わりがあるはずでは無かったのだ。
「覚えていらっしゃらないのですか?」
寂しげな表情でこちらを見つめるも、全く解らない。
しかし、相手は雷志と氷斗の名前を呼んでいる時点で、何か知っているのだろう。
「…っう、頭が…痛い」
氷斗は風稀の肩に乗り頭を抱えた。
しきりに、何かが、何かが入ってくる…
と呟いている。
「多分…近付いたら駄目だ、離れろ…」