授 か り 人
暫しの沈黙。
今は硬貨を持ち合わせていない。
一番必要なものでもある。
しかし、いつのまにか現れたものを自分達のものにしていいのかとなると、考えてしまう。
「いや、貰っていこう」
雷志が動いた。
自分が持ち歩けるだけのものを服の中に入れていく。『お前らも持てよ』と回りに促し始めた。
「氷斗は何かを思い出したんだろ?おそらくあの女と戦った。ここで金が出てくるってことは、俺たちのこれからに必要なことなんだと思うぜ。
折角貰ったお金、大事に使わねーとくれた人に悪いじゃん」
確かにくれたものとなると、貰って帰らないのは失礼だ。しかし、本当に彼らに渡されたものなのかは不明である。
でも、この場合なら持っていっても問題はないだろう。
最終的に、このお金はありがたく使わせてもらうことで決まった。
早速、昨日泊まった旅館に代金を払いに行く。