授 か り 人
 翌朝、日差しを浴びて目を覚ました雷志は、太陽の日差しが明るいことに気付き、寝すぎてしまったと飛び起きた。

「起きましたね」

 目の前をふよふよと飛ぶ火栄を見て焦る雷志。
「弁当って、朝の早い時間って言ってたよな?」

 火栄を避けながら布団から起き上がり、部屋を出ていこうとする雷志に火栄は苦笑いをしながら声をかける。

「氷斗と風稀がもう買いに行きましたよ」

 その言葉を聞いて、そうかと呟きベッドに腰かける雷志。
 思っていたより昨日は疲れていたようだ。

 無理もない、記憶を消された翌日にセイラとマインの話を聞き、空を飛び水を吸収し、氷斗が倒れたり人魚に出会ったりして……と忙しない二日間だった。

「とはいえ、チュラ川までは三時間はかかると言ってたし、二人が戻ってきたらすぐに出発だな」

 雷志は枕元においてあった荷物を整理し始めた。

「ところで、オレの荷物は誰が持ってくれるのでしょうか?」

 床にまとめて置いてある一人分の旅の荷物を見ながら火栄が言う。

「そりゃぁ、自分で持ってくれよ」
 雷志のそっけない返事に火栄が反発する。

「無理ですよ、カバンだって皆さんと同じ人間用のサイズですし、水筒も俺にとっては大きすぎます」
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