授 か り 人
「ねぇ、僕耳が痛くなってきた」

 雷志や氷斗も耳の辺りを押さえている。
 嫌な予感がする火栄は三人にここで待つように伝えて一人で先に進もうとし始めた。

その間も子供たちは増えていき、楽しそうにずっとはしゃいでいる。

「いや、火栄が一人で言ったところで何が起こっているのか分からないんじゃどうしようもないぞ」

 飛び立った火栄を止めようと手を伸ばすが、雷志の耳は痛みを増し思考も低下してくる。

 四人の周りには霧がかかり明らかに様子がおかしい。

 足元がおぼつかなくなり膝をつく三人を見て、自分だけが平気なのは何か理由があるはずだと火栄は子供たちの中へと入っていった。

「火栄は……大丈夫なのか?」

 視界もぼやける中雷志が声をかけるが、火栄は普段通りの口調でオレは大丈夫ですと返事を返してくる。

 氷斗の一件もある。自分にしか解決できない何かが起こっているのかもしれないと神経を集中させるが一向に状況の把握が出来ない。

 後ろでは三人が耳を押さえて今にも倒れこみそうだ。
 どうすればいい。

「思い出さないのか…」

 霧の隙間から男性の声が聞こえてくる。

 霧の晴れた一角には、赤子を抱いた男性が岩を椅子代わりにして座っている姿が見える。
 あんなところに岩なんて無かったはずだ。
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