授 か り 人
「私の子供たちは困ったもので、一人泣き始めると全員が一緒に泣き始めるんです」

 その言葉に聞き覚えがあった。


 抱かれている赤子を泣かせてはいけない!


 しかしなぜ、なぜそんなことを思うのか。
 火栄の頭は混乱し始めていた。
 これも四人で旅をしていた時の記憶だと言うのか。

男性は手を振り上げて抱いている赤子に向けてその手を振り下ろそうとしていた。

「だめだ、それはダメだ!」
 火栄は叫ぶ。

「三人とも、出来るだけ遠くに逃げるんだ!」

 しかし三人は痛みと朦朧とした状態が続いていて身動きが取れない。

「パァン!」

 男性が振り下ろした手は、まっすぐに赤子の頬にあたり、数秒後にその赤子の鳴き声が草原全体に広がった。

「あああああああ!!!」

 後ろでうずくまっていた三人は地面に倒れこみ、両耳を押さえてのたうち回っている。

 赤子の声を聞いた子供たちは一様に赤子同様鳴き声を出し始めた。
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