授 か り 人
「オレは音に耐性があるんです。先ほどの子供たちの声を聞いていても何も辛くなかったんです」
「鳥のさえずり。音を操作することが出来るとでも?」
「操作するというより、制御する感じでしょうか。
耳から入ってくる音を遮断することが出来て、あの綺麗な鳥のさえずりを利用して排除している感じですかね」
綺麗な空を見上げた火栄はそう雷志に返事をした。
「四人で戦った記憶は思い出しましたが、それがいつの記憶なのかは全く思い出せないですし、氷斗が戦ったと言った人魚のことも思い出しませんね。
要するに何も解らないと言うことです」
そう言って火栄は雷志や氷斗に任せていた自分の荷物をまとめ始める。
「大きな体をもらったからには、自分で運ばないといけませんね」
「当たり前だ、今まで運んでやった俺様に感謝しろよ」
そんな会話を聞いて風稀がケタケタと笑う。
四人は再びチュラ川に向かって歩き出した。
「着いたねー」
川岸に立った風稀が両手を挙げて声を上げる。
「それにしても暑いな。水筒に入れておいた水もなくなりかけてるし、川の水を汲んでおくか」
氷斗が川を覗くと、綺麗な川底が見える。
足先を少しだけ水につけながら水筒に水を汲もうと座り込んだ。
「えいっ」
風稀がその背中を軽く押した。
「うおっ! 馬鹿お前、なにすんだよ!」
川の中に手を付いた氷斗はすぐさま立ち上がり、途中まで汲み終わった水筒の水を風稀に巻き散らす。