授 か り 人
「やめてよー、ひどいよー」
そう言って逃げ回る風稀に『ひどいのはどっちだ!』と追い掛け回す氷斗。
そんな二人を後目に水を汲み始める雷志と火栄。
照りつける太陽にはいささか厳しいところもあったが和やかな雰囲気が流れる。
「おい風稀、この川に魚がいるぞ」
雷志が見つけたのは十数センチの川魚だった。
「魚?本当?僕も見つけたい」
雷志と火栄、二人の元へ走ってくる風稀の勢いが強すぎた。二人の肩を掴み、間から身を乗り出そうとした風稀はそのまま顔から川へ突っ込んでしまった。
引っ張られる感じで川に落ちそうになった雷志と火栄も肘まで川に浸かっている。
「冷たーい!」
そう叫んですぐ立ち上がる風稀。
「俺様に悪戯なんかするからだ」
氷斗はご満悦だ。
「小さな砂が舞い上がってきたじゃないですか、せっかく汲み終わりそうだったのに」
そう呟いて火栄は位置を変える。
「悪いな、俺が風稀を呼ばなければこうはなってなかったな」
そういってあはははと笑いだす雷志の横で『そうだ、魚!』と風稀がバシャバシャと川の中に入っていく。
「あまり歩き回ると魚は逃げてしまいますよ」
水を汲み終わったのか火栄は少し離れた場所に座り込んでカバンの中に水筒を入れている。