授 か り 人
「こら風稀! これは流石にひどいぞ」
 膝立ちになった雷志はびっしょりと濡れた服をつまんだ。

「大体の予想は付いたと思いますけどね」
 そう言って火栄が小さく笑った。

「でもさ、気持ちいいでしょ? 足を冷やしてたらあんまり暑くないよ」
 手で水を汲んで雷志にばしゃばしゃとかける。

「おい、やめろって、まったく…」

 雷志は膝立ちのまま風稀の手を引いて同じように川に放り投げた。

「わあ! 冷たい! でも気持ちいい!」
 風稀ははしゃいで笑い声をあげている。

 それを見て気持ちよさそうだと思ったのか氷斗も川に戻ってきた。
 川岸の水を手ですくって顔を洗っている。

「こりゃあ気持ちいいな」

「氷斗もこっちにこいよ、全身浸かるともっと気持ちいいぞ」
 雷志の声掛けに『行かねーよ』と即答した氷斗は背伸びをして昼飯でも食うかー、と言う。

 チュラ川までの道のりは休憩を含みながら四時間弱の道のりだった。
 時間も丁度いいだろう、雷志と風稀も川から上がり晴天のもと寝転がった。

 ジリジリと照らす太陽の光が少しずつ濡れた服を乾かしてくれる。

 朝買った弁当の中にはちまきが三つと数種類のおかずが包まれていた。
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