授 か り 人
三十分ほど歩いた頃だろうか、通路が無くなった。
無くなったと言うより、先ほどのコテージの住人が言った通り一回り小さい木が立派に生い茂っていた。
その木に触れた氷斗は『なんだか違和感があるんだよな』と何度もつぶやいている。
等間隔に生えてきている木のおかげか先に進めないわけではないが歩きずらい。
地面にはたっぷりの葉っぱも落ちていて足を取られる。
「近道って言ってたけど、なんだか二時間以上はかかりそうだな」
そんな不満を口にした雷志は頬にあたる風に違和感を覚える。
「なんだか嫌な予感がする」
「僕も」
以外にも風稀も何かを感じ取ったようだ。
それでも歩みを進めていくが、進めば進むほど風の勢いは増してゆく。
『ミシミシミシ…』
どこかで木が倒れる音がし始めた。
「風が……強いですね」
腕で顔を押さえながら火栄はその隙間から前方を確認するがまだよく見えない。