授 か り 人


 冷たい水を飲みながら背もたれに体を預けて休んでいると勇視が器を運んできた。

「採れたてキノコのスープが出来たよ。香辛料も入れておいた。体が休まるはずだよ」

 風稀、雷志と順番に器が並べられる中氷斗がその中身を見て焦ったように言う。
「これは食べたらだめだ!」

 食べようとしていた風稀の箸を奪い取らんばかりの行動をとる氷斗を見て雷志も不審がる。

「せっかく作ってくれたんだぞ、食べない方が失礼じゃないか」

「腹を壊して一日中寝込んでもいいなら食え。俺様は食べない」

 そういって、箸で一つのキノコを持ち上げ『これは毒キノコだ』とみんなに見せた。

「おとうさん、キノコの選別をしないで使ったのかい? そんなもの食べさせるわけにいかないじゃない!」

 奥さんが叫ぶように器を次々と回収し始める。

 見るからに落ち込んだ勇視。

「今日は自信があったから大丈夫だと思ったんだけどな」

 そう言って苦笑いしている。
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