空気清浄機彼女
男は憂鬱な気持ちで
公園へと入っていく。


毎朝通るこの公園は
駅への近道なのだが

男にはここを通る
もう一つの目的があった。


「もうそろそろ見ごろだろうな」


独りつぶやく男。

公園の砂利道を踏み締めながら
歩いていく。

それは公園の中ほどに
広がっていた。

足を止めて深呼吸。

朝起きてからはじめて
穏やかな気持ちになる男。


「やっぱ春はいいや」

桜。

男の上を覆い尽くす満開の桜。

男の憂鬱な気持ちが
一瞬にして晴れていく。

男は桜の森の満開の下
小さな贅沢を味わっていた。
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