図書室の悪魔

「返してよ!」

 慌てて取り返そうとしても、返してくれる気配はない。
「先生相手にタメ口をきくのか?」
「先生が生徒に嫌がらせすんの?」
「嫌がらせじゃねえよ。いわば、教育的指導だな」
「はあ?」
 何を言っているのだ、コイツは。
 いいから早く返してよ!誰かに見られたらどうすんの!

「返してほしいか?」
「当たり前でしょ!」
 いい加減にしてよ、と怒っても、どこ吹く風だ。
 それどころか、とんでもないことを言い出した。

「返してほしいなら、俺の言うことを聞くんだな」
「え?」

「不純同姓交遊なんて外れた道を歩んでいる生徒には、俺が直々に指導してやるよ」

 言うが早いか、指先で顎を持ち上げられ、そのまま唇にやわらかい感触。

< 12 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop