頑張り屋な彼女と紳士の皮を被った狼
こいつはいつもこうである。

ぎりぎりになって私に頼みこんでくるのだ。

営業の手伝いや資料作りは営業事務である私の仕事だが、それにしたって範疇を超えてるだろうが!


「な、頼む。お前しか頼れねえんだよ。ほら、お前仕事速いし。」


鈴木の弱り切った顔を見て、私はため息をついた。

こうなったらいつものこと。何とかするしかない。


「――必要な資料全部かき集めてきて」

「やってくれるのか!?」

「やるしかないでしょうが! 資料全部よ! 一つでも漏れてたらできないからね!」


私は大声で怒鳴り返した。


「助かります、市川様! すぐにお持ちしますーー!」


そう言って、鈴木は自席へすっ飛んで行った。

周りの同僚からは同情の視線が注がれる。



思わずため息が出るが、この部署では恒例イベントである。

鈴木の馬鹿の尻拭い。

あのお調子者は営業成績はそこそこいいのだが、いつも詰めが甘い。

ぶっちゃけ、何度言っても変わらないので、その帳尻合わせが私に降りかかってくるのである。

あー、このやろう。今度飲み代奢らせてやる!

私はそう心に誓って、資料読みに取り掛かり始めた。


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