頑張り屋な彼女と紳士の皮を被った狼
「やっぱり、市川さんまだいたね」


振り返ると、すらりと背の高い男性が立っていた。


「主任! どうしたんですか、こんな時間に?」


うちの営業部の主任、早瀬さんだった。

うちに異動してきたのはまだ数か月前だが、30代前半なのに管理能力ばっちしで仕事ができる。

実際この人のおかげで仕事がかなりやりやすくなった。


しかも、長身の精悍な顔立ちで性格も穏やか。

配属初日でうちの部署の女性陣は目の色を変えた。

もともとうちの社内で噂になる程の人で、しかも独身。

配属挨拶の時に、女性陣が小さくガッツポーズをしていたのもしかたなかったりする……。


かくいう私も、ちょっとドキっとしたりしたが。

でも、どちらかと言うと、私は彼の仕事ぶりに惚れたたちだ。

みんなのフォローも細やかだし、部下の失敗も頭ごなしに怒らない。

これぞ頼れる上司の見本!って人なのだ。


そんないい人であるわけだが、こんな時間にどうしたのか。

確か、定時前に営業に出て行って、直帰のはずだったんだけど。


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