黒い男と白い女
(今がつまらない……)


白い女が最後に発した言葉は俺の心臓を鷲掴みにして離さない。


たしかに、今はつまらない。


贅沢な話かもしれないが、ただ毎日大学に通ってバイトに行って、家に帰って寝る。


その繰り返しの暮らしに嫌気がさしているのは事実だ。


だけど、この平凡が幸せなのかもしれない。普通の日常こそ誰しもが求めることかもしれない。


なのに……。


俺の足は黒い男の方へと歩みを進めていた。


「……来たか」


背後に立っただけなのに気付かれた。


「見ろ、18連チャンだ」


「……」


「愛想のないやつだ。本当にこいつでいいのか?“白”」


「うん、この人が適切だと思うわ」


更に俺の後ろに白い女が立っていた。


俺はまったく気づかなかった。


「場所を変えよう」


そう言って黒い男は立ち上がり、表へと歩いて行った。
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