黒い男と白い女
「なんなんだあいつら……」


トイレで用をたしていた俺は呟いた。


「あいつらって?」


独り言のはずなのに応える声があった。


「!?」


「あいつらって、誰?」


俺の後ろに“それ”が立っていた。


真っ白な女が立っていた。


「ねぇ、誰のこと?」


「お、お前、ここ男子トイレだぞ」


すぐに俺は排泄をするために出していたアレをしまった。


「ここがどこだっていいの。私はあなたとお話がしたかったの」


「と、とにかく出ろ」


俺は白い女の手首を掴み、トイレへと続く廊下に引っ張り出した。


白い女の手首は冷たい。まるで血の通っていない無機質なもののように。


「ねぇ、離して。汚い」


言われて俺はすぐに手を離した。


白い女は肩にかけたポーチからフリルがついたハンカチを取り出し、俺が掴んだところを念入りに拭いた。


「うん。キレイになった。それじゃあ、私とお話ししましょ」
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