黒い男と白い女
(お話ししましょって……)


「別にお前なんか話すことなんかねぇよ」


「嘘よ。さっき私のことずっと見てたじゃない。ねー」


ポーチに付けた大きな白ウサギに話しかける女は誰がどう見ても異質。


「ほら、話して」


「……そうだな。じゃあ、男子便所に入るな」


「違う」


はっきりとした一言。うるさいフロアのはずなのに耳に残る一言。


「違いますねー。このお兄ちゃんは何を言ってるんですかねー」


またウサギに話しかける。


(関わりあいにならないほうがいい)


俺はこの場を去ろうとした。しかし、今度は逆に女に手を掴まれた。


「さっきの場所で“黒”が待ってるから」


「やっぱり、お前ら関係あるのか」


「私はお話しする気なくなっちゃった。あとは黒に聞いて」


「待ち構えてるのが分かって誰が戻るかよ」


「いえ、あなたは行くわ。……つまらないんでしょ。今が」
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