それでもお構いなしに私を教室の外に連れ出そうと、紗来は机をガタガタと揺らした。

「もう!かまくら作りはまた今度だってば!」

紗来の地震攻撃に耐え切れなくなった私はようやく顔を上げて言った。

「なんで!だって外すごい積もってるよ!行こうよ〜。」

膨れっ面をする紗来。
でもそんなのは見ないフリだ。

「あ、の、ね!私は昨日誰に付き合い何時間外にいたでしょう?この寒い冬の日に!」

「私に付き合い3時間です…。」

「だよね〜、風邪引かなかったのが奇跡のようだよ。」

私はとびきりの笑顔を向ける。もちろん嬉しいとか楽しい感情から来る笑顔ではない。
それは紗来もわかっている。

「紗奈のケチっ。」

悪態ついて席につく紗来。

…私3時間も付き合ったんだけど。

はぁ、とため息が漏れた。


帰り際、委員会があるから少し待っててと言う紗来にOKサインを送り、校門のところで待つことを伝え外に出る。
目の前に広がる白い絨毯には無数の足跡がついていて
少しでも雪を残したかった私は誰のとも知らぬ足跡と同じ道を辿って校門まで歩く。

今日も空気が気持ちいい。
空気が凛として清んでいるから冬は好きだ。
そんなことを思いながら紗来が来るのを待っていた。

「ごめ〜ん。」

校舎から出て
こっちに向かって謝りながら走ってくる紗来。

その表情がどう変わるのか私はわくわくしながら近づいてくる紗来を待つ。
ようやく私の元へと辿り着いた紗来に私は後ろ手に持っていたうさぎの形をした白いかたまりを渡した。

「はい、これかまくらのお詫び。」

すると紗来は跳び上がって喜んだ。

「うわぁ!雪だるま!じゃなくて、雪うさぎ!かわいい〜!!」

紗来の表情はもちろん予想通り満面の笑顔。
私はこの笑顔が大好きだ。

「紗奈、大好き!!」

雪うさぎを大事に抱え、そう言ってくれる紗来に対して
私も満面の笑みを返す。

「じゃ、今日は仲良く3人で帰りますか。」

「うん!」

冬の寒い帰り道。
ふたりの心はその気温とは正反対で
とてもとても暖かかった。


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