小悪魔 BOY
「どういうつもり?」
近くのスタバに来た私たちはそれぞれ飲み物を注文して席についていた。
「前に先輩を迎えに来たやつ、…確か橘要だよな?」
またタメ口。
「だったら?」
「そして、先輩の婚約者」
一体この子は何者なんだろう。
「先輩は、弓道が出来なくなって跡が継げなくなった。だから先輩のおじいさんは跡取りとして婚約者を3年前、日本2位で幼なじみのあいつを選んだ。…違う?」
この子…
「何でそんな事…」
婚約はまだ発表されてないのに。
どうしてそんな身内の話を彼が…
「俺、…月島流の跡取りなんすよ」
は?
「先輩のおじいさんが最初に目を付けた跡取りが俺だった。だけど、家の親が断ったんだ。うちも1人息子で跡取りがないからね」
「待って…話がよく理解出来ないんだけど」
じゃあ何?
彼は私の事、全部知ってたの?
知ってた上で、私に告白してきたの?
聞きたい事はいっぱいあるのに何故かうまく言葉にならない。
「ちっ…タイムリミットか」
何の話?
── カランカラン
店の扉が開く音が聞こえ、目を向けると要の姿。
「先輩、俺と付き合って」
そう言う彼の目は真剣。
お互い恋愛は許されないはずなのに。
「高校生活の間だけの、限られた1年を俺と過ごしてよ」
私は彼の目から反らす事も出来ず、ただ彼を見つめていた。