日のあたる場所で


「うん…でも、知秋にも嫌な思いをさせちゃった。」


「そう…ですか。」





二人の間に沈黙がながれる。



「お嬢様。そろそろお部屋に戻りましょう。薔薇も飾りましたよ。」


詩織さんが私を呼びに来てくれた。


「はぁい。……じゃあ、翔太君またね。」


「はい。あっ…。」


翔太君は何かを言いかけると私の手をつかんだ。


「薔薇のトゲは、ちゃんと取ってありますから。」


優しく笑って手を離すと、手入れの道具を持ってまた庭の方に歩いて行った。



翔太君に握られていた手が熱く感じた。


「お嬢様?」


「今行きまぁす。」





それを、知秋に見られている事を知らずに私は薔薇を見たくて部屋に急いだ。





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