日のあたる場所で
でも、知秋に優しく抱きしめられて私の心は不安でいっぱいだった。
知秋は普段、あんな事を言う人じゃない。
知秋があんな事を言う時は、だいたい機嫌が悪い時…。
「知秋。あの……。」
知秋の顔を見ようと頭を動かした瞬間、グッと抱きしめる力が強くなった。
「見るな…今は、顔を見られたくない。だから、もう少しこのままで。」
「うん…。」
私はそっと知秋の背中に腕を添えた。
知秋は今、何を思ってるの?
ピピピッ
「…っと。もうこんな時間か。そろそろ戻らないと。……ごめん、菜月。」
知秋の腕時計が鳴ると、そっと私を放して部屋を出て行ってしまった。
「何も言えなかった。……変だよね、ずっと一緒にいるのに知秋が分からないなんて。」
無意識に私は、薔薇の花に話しかけていた。
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