なんちゃってのその後に



「重樹…顔がニヤけてる。鼻歌が流れてる。」

「…え?」

薄片作成中。
薄片は石を薄くしんといけないから結構集中してる…はず。
なのに突然、暁(サトシ)に突っ込まれた。

「え、今、俺、ニヤけてた?」

「バッチリ。…朱香さん?」

「………っ!!」

「ごちそうさま。」

「…………。」


バレバレのようです…。

無意識に幸せがおもてに出ることだってありますとも。
若干苦労したし。

ちなみに暁は同じ研究室。
バイク仲間。
ライブもよく一緒に行く。
悪友?

当然、朱香のことも知ってる。
と、言うか、昨夜、今までの話を一晩中ずっと俺に聞かされていたから知らないはずがない。
その時も若干ウザいくらいニヤニヤ俺の話を聞いていた。

「会いに行って来たらいいのに。」

「…や、今日はバイト一緒だったし。土曜日映画行くし。」

「なんだ、ノロケたいだけか?」

と言いながらまたニヤニヤしてやがる…。

いいけど。

「…独り身の人にはこの幸せは解りませんよね。」

「…ひどっ。」

「冗談だよ。」

「ホントかよー?ま、良かったな。」

「…うん。」

ホント。
良かった。



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